天之尾羽張(アメノオハバリ)といえば、
日本神話に出てくる三大神剣のひとつ。
またはその神剣に宿る神様の名前なんですが、
神話でいったいどんな活躍をしたのかは、あまり知られていません。
そんな剣神(神剣) 天之尾羽張にまつわる神話と、
お祀りしている神社をご紹介します!
天之尾羽張とは?
天之尾羽張(アメノオハバリ)とは、日本神話に登場する神剣のひとつ。
というか、古事記などの神話では、天之尾羽張を神様として扱っています。
あの有名な神剣 天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ=草薙剣)が、
あくまで剣として扱われているのと比べて、微妙にポジションが違いますね。
天之尾羽張の神話① 火之迦具土神を切り殺す
天之尾羽張がまず登場するのは、伊邪那岐(イザナギ)と伊邪那美(イザナミ)の神生みの神話。
その中の「イザナミの神避り(かむさり:神の死)」にまつわるお話です。
その神話はこんな感じ・・・
高天原の偉い神様たちの指示で、地上界に降りて国生みを行なったイザナギとイザナミ。
日本の国土は順調に出来上がり、次に神様を産み始めます(神生み)。
夫婦はどんどん子を産んでいくのですが、
ある日のこと、悲劇が起こってしまいます・・・
それは、イザナミが火の神 火之迦具土神(ヒノカグツチ)を生んだ時のことでした。
ぎゃ~~!!
イザナミの絶叫がほとばしりました!
燃え盛る赤子を産んだため、陰部を大火傷してしまったのです!
火傷はとっても酷く、瀕死の重傷でした。
イザナミは病床でもだえ苦しみます。
ゲロを吐き、大便や小便を垂れ流し、悲惨な苦しみようでした・・・・
イザナミ「うう・・・ くるしい・・・」
イザナギ「がんばれ、イザナミ!」
そして・・・
イザナミは苦しみぬいた末、とうとう亡くなってしまいました。
妻を亡くしたイザナギは、深い悲しみにくれました。
イザナギ「愛しい妻を、たったひとりの子のために失うなんて・・・」
時間がたって気持ちが落ち着くどころか、悲しみはどんどん募っていきます・・・
そして、妻を亡くした悲しみは、ヒノカグツチへの怒りへと変わっていきました。
イザナギは、赤子のヒノカグツチを、憎しみの目で見つめます。
そして・・・
十束の剣(とつかのつるぎ)を抜き・・・
ザシュッー!!
ヒノカグツチの首を切って殺してしまったのです・・・
この時、火之迦具土神の死体や血から神様がたくさん生まれました。
そのうち、血が刀の根本から岩に飛び散って生まれた神様が
建御雷神(たけみかづちのかみ)です。
ちなみに、「十束の剣(とつかのつるぎ)」とは、
握りこぶし十個分の長さの刀の総称であり、特定の剣の名前ではありません。
実は、この神話には天之尾羽張の名前は出てこないんです。
だけど、この時イザナギが使った刀は、天之尾羽張に間違いありません。
その証拠は、次の神話で解りますよ。
この神話の詳しいお話は、ここで読むことができます↓
天之尾羽張の神話② 国譲りの使者役を頼まれる
時代は移り変わって、神話は国譲りの章。
この神話では、剣神 天之尾羽張が登場します。
神話はこんな感じのお話・・・
国津神の盟主 大国主大神に「地上界を譲れ。」と迫る、天照大御神率いる天津神たち。
でも、何度地上へ使者を送っても上手くいきません。
天之忍穂耳命(アメノオシホミミ)は、怖くなって途中で引き返してきちゃい・・・
天穂日命(アメノホヒ)は、大国主に心酔して寝返っちゃい・・・
天若日子(アメワカヒコ)は、野望を抱いて大国主の娘と結婚しちゃい・・・
もう、踏んだり蹴ったりです・・・
しかしアマテラスの根気もそうとう強い!
折れることなく、次の使者を誰にするか相談しました。
アマテラス「次は誰がいい?」
天津神「こうなったら、剣神 天之尾羽張(アメノオハバリ)に頼みましょう!」
ということで、天之尾羽張に遣いを出すことになりました。
でもひとつ問題がありました・・・
天之尾羽張は山の上のほうに住んでおり、おまけに河をせき止めて道を塞いでいるので、そこへ行くことができません。
そこで選ばれた伝令が 鹿の神 天迦久神(アメノカク) です。
アメノカクは、道なき道をぴょんぴょん進んでいき
あっさり天之尾羽張のもとへ着きました。
そして、アメノカクから伝令を受けたアメノオハバリは・・・
オハバリ「わかりました。お引き受けしましょう。」
オハバリ「ただし私ではなく、息子の建御雷神(タケミカヅチ)に行かせましょう。」
と言うわけで、使者となった建御雷神(タケミカヅチ)は、船の神 天鳥船神(アメノトリフネ)と共に地上に降り立つのでした。
さあ、タケミカヅチの活躍はいかに!?
おしまい
天之尾羽張の神話はこれでおしまいなんですが、
あの時生まれた建御雷神は、天之尾羽張の息子だったんですね。
と言うわけで、イザナギが火之迦具土神を切り殺した時に使った刀が、
神剣 天之尾羽張だったことが判ります。
この神話の詳しいお話は、ここで読むことができます↓
天之尾羽張の神格・ご利益など
天之尾羽張の別名
伊都之尾羽張神
(いつのおはばりのかみ)
稜威雄走神
(いつのおはしりのかみ)
天之尾羽張の神格
- 刀剣の神
天之尾羽張をお祀りする神社
- 佐斐伊神社(島根県雲南市)
- 肆布都神社(長崎県壱岐市)
- 葛城天剣神社(奈良県御所市)
- 磯部神社(三重県志摩市)
- 鹿島天足和気神社(宮城県亘理郡)