天之忍穂耳命(あめのおしほみみのみこと)って、いったいどんな神様なんでしょう?
実はこの神様、由緒正しい血筋の神様なんですが・・・
「ちょっとものぐさな性格?」
「それとも弱っちい・・・?」
なんて思ってしまうような、ちょっとアレな神話をもつ神様なんです。
そんなオシホミミについてご紹介します!
天之忍穂耳命(アメノオシホミミ)はこうして生まれた
まずは、天之忍穂耳命(アメノオシホミミ)が生まれた神話をご紹介!
時は「アマテラスとスサノオの誓約(うけい)」まで遡ります・・・
アマテラスとスサノオ
天照(アマテラス)と須佐之男(スサノオ)、そして月夜見(ツクヨミ)は兄弟です。
そしてこの三柱の神様の父は、あのイザナギなんです!
父のイザナギは、子どもたちにこう言いました。
「アマテラスは高天原(たかまのはら)を治めなさい。」
「ツクヨミは夜の世界を治めなさい。
「そしてスサノオは、海の世界を治めなさい。」
こうしてアマテラスと月夜見は、言われた通り自分の場所へ向かいます。
でも、スサノオは言いつけを守らず、ずっと泣きわめいていました・・・
あまりに長い間泣きわめくので、世界は荒れるばかり・・・
あらゆる禍(わざわい)が起きていました。
イザナギ「おまえ、なんでそんなに泣いてんの?」
スサノオ「イザナミ母さんに会いたいんだよ~!」
実は、イザナミ母さんはもう死んでしまっていて、いまは 黄泉の国(死者の国)にいるんです。
しかも、イザナギとイザナミは、仲たがいして離婚しています・・・
スサノオのその姿に怒ったイザナギ
イザナギ「そんなに会いたいなら出ていけ~!」
とうとうスサノオを追放してしまいます。
そしてスサノオは天界へ
「そうだ!母さんのいる死者の国へ行こう!」
「でもその前に、姉ちゃんに挨拶しにいこう。」
スサノオはそう思い立ち、天界へ向かいます。
スサノオが歩くと、山や川や大地が大きく揺れ動きました。
あまりに大きな振動に警戒した、アマテラス姉ちゃん。
アマテラス「天界を奪いに来たのかも・・・!」
アマテラスは完全武装してスサノオを待ち構えます。
アマテラス「あんた、天界を奪いに来たのね!?」
スサノオ「違うよ姉ちゃん!別れの挨拶に来たんだよ~」
スサノオはこれまでの事情を説明するのですが、アマテラスは信じません・・・
スサノオ「じゃあ、誓約(うけい)して神を生もうよ姉ちゃん。」
誓約(うけい)とは、あらかじめ決めたとおりの結果が出るかどうかで、吉凶を判断する占いのこと。
神様同士がものごとの白黒をつける手段として、誓約のシーンが時々出てきます。
スサノオは自分を信じてもらうために、神生みで誓約しようと持ちかけ、アマテラスもこれを受けました。
アマテラスはスサノオの剣を噛んで噛んで噛み砕き、ふーっと息を噴出すと三柱の女神が生まれました。
次にスサノオがアマテラスの勾玉を噛んで噛んで噛み砕き、ふーっと息を噴出すと五柱の男神が生まれました。
その時最初に生まれた男神が 天之忍穂耳命(アメノオシホミミ)です。
ちなみに誓約の結果はと言えば・・・
スサノオ「俺の剣から生まれた女神たちは俺の子だよ。俺の心が清いから女神が生まれたんだよ!」
そう言って押し切ってしまいましたとさ。
オシホミミの正式な名前は長い!
ちなみに、オシホミミの正式名は
正勝吾勝勝速日天之忍穂耳命
(まさかつ あかつ かちはやひ あめのおしほみみ)
スサノオが次のように言ったのが、名前の由来なんだとか↓
「正に勝った!(正勝) 俺が勝った!(吾勝) 勝った神なのだ!(勝速日)」
天之忍穂耳は何の意味かと言うと
天之(あめの)
天界の(天津神の)
忍(おし)
多し
稲(ほ)
稲穂または秀(ほ:秀でる)
耳(みみ)
実実(たくさん実がなる)
つまり、オシホミミは稲穂の神様のようです。
余談ですが、この後スサノオは天界で大暴れしてしまい、アマテラスの「天の岩戸」の神話へと続いていきます。
天之忍穂耳命は、地上界へ行くのを嫌がった?
オシホミミは、この後「国譲り」の神話にも登場します。
でも、その時のオシホミミ、なんだかアレなんです・・・
地上界 葦原の中つ国は、出雲の大国主大神(オオクニヌシ)の下で、大繁栄していました。
高天原からそれを見たアマテラス、こう言います。
アマテラス「ムキー! 地上界は長男のオシホミミが治めるべきなのよ!」
アマテラスは、国津神が地上界を支配しているのが、気に入らなかったのでしょうか・・・
葦原の中つ国は、もともと両親のイザナギとイザナミが生んだ国ですからね。
さて、アマテラスの命を受けたオシホミミは、さっそく地上界へ向かいました。
でも・・・
オシホミミはちょっとアレな神様だったんです・・・
オシホミミが 天浮き橋(あめのうきはし:天と地の境にある橋)から地上を見たときです。
そこにはやたらと物騒な国津神たちがたくさん・・・
オシホミミ「おいおい、こえ~よ・・・」
なんとオシホミミは、そこから天界に引き返してしまったのでした・・・
天之忍穂耳命、またもや天降り回避!
その後はもう散々・・・
アマテラスの次男の天穂日命(アメノホヒ)が大国主側に寝返ったり、
野望に燃える天若日子(アメノワカヒコ)が寝返って死んだり・・・
最後に武神 建御雷神(タケミカヅチ)の活躍によって、やっと地上界は天津神のものとなったのでした。
アマテラスは、改めてオシホミミにこう言います。
アマテラス「やっと地上界を平定できたから、天降りして治めなさい。」
オシホミミ「え~・・・ 天降りしようと準備はしてたんですけどねえ・・・」
アマテラス「なによ?」
オシホミミ「実は、その間に息子の邇邇芸命(ニニギ)が生まれたんですよ~」
オシホミミ「この子を地上界に天降りさせるべきかと・・・」
なんとオシホミミ、自分の代わりに息子のニニギを推してしまいました・・・
そこまでして下界へ降りたくなかったのか・・・
この後ニニギは、アマテラスの孫として天降りすることになります。
いわゆる「天孫降臨」の神話です。
神話では、日本初代の天皇である神武天皇は、このニニギ(邇邇芸命)の直系の子孫です。
つまりオシホミミは、天照大神の長男であり、天皇の直系のご先祖様でもあるんです。
ホントはすごい神様なのかもですね・・・
天之忍穂耳命のご利益とお祀りしている神社
天之忍穂耳命(アメノオシホミミ)のご神徳
- 開運招福
- 勝運招福
- 子孫繁栄
- 商売繁盛
- 家門繁栄
- 入学・就職
- 結婚
- 厄除け
- 病気平癒
- 諸願成就
- 家内安全
天之忍穂耳命を祀る主な神社
伊豆山神社
静岡県熱海市伊豆山708-1
新田神社
東京都大田区矢口一丁目21-23
二宮神社
兵庫県神戸市中央区二宮町三丁目1−12
阿賀神社
滋賀県東近江市小脇町2247
英彦山神宮
福岡県田川郡添田町英彦山1
西寒多神社
大分県大分市 寒田1644