神社に参拝すると、境内でよく見かける祓戸大神(はらえどのおおかみ)。
「お祓いをする場所にいます大神」という意味で、つまりお祓いの神様です。
祝詞(のりと)にも大きく関わっている大事な神様なんですが、いったいどんな神様なんでしょうか?
実はこの神様は一柱だけではないんです・・・
祓詞に登場する祓戸大神
神社でお祓いや御祈願をしているときに、ご神職が独特な言い回しで神様に語りかけているのを聞いたことがありませんか?
あれを祝詞(のりと)というんですが、最初にかならず唱えるお祓いの詞があるんです。
これです!
掛けまくも畏き
伊邪那岐大神
筑紫の日向の橘の
小戸の阿波岐原に
禊ぎ祓へ給ひし時に
生り坐せる祓戸の大神等
諸々の禍事・罪・穢
有らむをば
祓へ給ひ清め給へと
白すことを聞こし召せと
恐み恐みも白す
赤字のところが、神話に基づいて祓戸大神に呼びかけている部分。
ちなみにその神話はこんな感じ・・・
えら~い神様に命じられ、地上界に降り立った 伊邪那岐(イザナギ)と伊邪那美(イザナミ)夫婦。
夫婦でこれまで、日本の国土やたくさんの神様たちを生んできました。
そんなある日のこと・・・
イザナミは火の神を生んだのですが、大ヤケドを負って死んでしまいます。
妻を失った悲しみに堪えられなかったイザナギは、死者の国へ逢いに行くのですが・・・
「ひえ~~~っ!!」
イザナミはすでに腐れはて、化け物のようになっていたんです!
今までの愛情はどこへやら、イザナギは慌てて逃げ出しちゃいました!
イザナミは醜い姿を見られて怒り狂い、黄泉の軍団とともに追いかけます!
逃げるイザナギ!
追いかけるイザナミ!!
数度のバトルを交わした末に、イザナギはなんとかイザナミの追撃をかわして逃げ切ったのでした。
そして、地上界に戻ったイザナギは、体の穢(けが)れを川の水で洗い清めました。
その時、なんと26柱もの神様が生まれたんです!
神話はだいたいこんな感じ。
この26柱の神様とは・・・
- 衝立船戸神
(つきたつふなとのかみ) - 道之長乳歯神
(みちのながちはのかみ) - 時量師神
(ときはかしのかみ) - 和豆良比能宇斯能神
(わづらひのうしのかみ) - 道俣神
(ちまたのかみ) - 飽咋之宇斯能神
(あきぐひのうしのかみ) - 奥疎神
(おきざかるのかみ) - 奥津那芸佐毘古神
(おくつなぎさびこのかみ) - 奥津甲斐弁羅神
(おきつかひべらのかみ) - 辺疎神
(へざかるのかみ) - 辺津那芸佐毘古神
(へつなぎさびこのかみ) - 辺津甲斐弁羅神
(へつかひべらのかみ) - 八十禍津日神
(やそまがつひのかみ) - 大禍津日神
(おほまがつひのかみ) - 神直毘神
(かむなおびのかみ) - 大直毘神
(おほなおびのかみ) - 伊豆能売
(いづのめ) - 底津綿津見神
(そこつわたつみのかみ) - 底筒之男神
(そこつつのをのかみ) - 中津綿津見神
(なかつわたつみのかみ) - 中筒之男神
(なかつつのをのかみ) - 上津綿津見神
(うはつわたつみのかみ) - 上筒之男神
(うはつつのをのかみ) - 天照大御神
(あまてらすおおみかみ) - 月読命
(つくよみのみこと) - 須佐之男命
(すさのおのみこと)
イザナギの禊ぎで、こんなにたくさんの神様が生まれたんですね~。
※この時どんな神様が生まれたのか、詳しく知りたい人はこちら。
この部分の神話を読みたい人はこちら!
大祓詞では祓戸大神とは4柱の神様
つづいて大祓詞(おおはらえことば)という祝詞のお話です。
- 瀬織津比売(せおりつひめ)
- 速開都比売(はやあきつひめ)
- 気吹戸主(いぶきどぬし)
- 速佐須良比売(はやさすらひめ)
大祓詞は長いので省略しますが、その主な内容を超適当に書くと・・・
ここは天照大神の孫が平和に治める日本国。
この国に生まれた人々が、過ちを犯して生まれるだろう罪は、あれあれ、これこれで・・・
だから儀式の準備を整えてさ、天界から伝わる神聖な祝詞(のりと)を唱えなさいよ。
天界の神様たちも、地上界の神様たちもちゃんと聞いてくれるよ。
そうなれば一切の罪は消え去って無くなってしまうのさ。
(罪はこんな風に消えるよ…)
川の瀬にいる瀬織津比売神(せおりつひめ) が、川から海に持ち出して、
海にいる速開都比売神(はやあきつひめ)が、ガブッと飲み込んで、
海に強風を起こす気吹戸主神(いぶきどぬし)が、地底の国へ吹き放って、
地底の国にいる速佐須良比売神(はやさすらひめ)が、その罪を持ってさすらっている間に消えてしまうんだよ。
このように、あらゆる罪を消してくださるから、この国に罪という罪は一切ないんだよ。
こんな感じですかね・・・
「罪」を「罪穢れ(つみけがれ)」と言い換えても良いかもしれませんね。
それで大祓詞に、祓戸四神が罪を消し去るストーリーがあるわけですね。
「瀬織津比売神(せおりつひめ) が、川から海に持ち出して・・・」って。
祓詞と大祓詞では祓戸の神様が違う?
こうして見てみると、祓戸大神は祓詞と大祓詞で違うような・・・
そこで江戸時代の学者 本居宣長(もとおり のりなが)さんはこう考えました。
こんな風に関連づければいいんじゃね?
・瀬織津比売は八十禍津日神
・速開都比売は伊豆能売
・気吹戸主は神直日神
・速佐須良比売は須勢理毘売命(スセリビメ)
※須勢理毘売命(スセリビメ)とはスサノオの娘です。
なんかちょっと強引って気もしますが・・・
でもこれで、イザナギの禊ぎの神話と祓戸四神がつながりましたね!