日向(ひむか)の国から東征を開始し、
征く先々の豪族を服属させてきた
神倭伊波礼毘古命(カムヤマトイワレビコ)と五瀬命(イツセ)の軍団。
しかし、大阪の地で敵襲に遭い
兄イツセは戦死してしまいました。
一人残されたカムヤマトイワレビコ、
ここからどうするのでしょうか?
前の話:神武東征② 神倭伊波礼毘古命と登美毘古(トミビコ)の戦争
大熊の呪い・・・
兄のイツセを失ったカムヤマトイワレビコでしたが、
それでも東征を続ける意思は変わりません。
彼は、さらに船を南に進めて回り込み、熊野村(和歌山県新宮市あたり?)に到着しました。
すると、なにやら怪しい者の気配が・・・
それはちらっと姿を見せて隠れ、すぐにいなくなってしまいました。
カムヤマト「なんだ、あれは・・・」
部下「大熊のようですな・・・」
その時です。
カムヤマト「うっ・・・!」
カムヤマトイワレビコが急に苦しみだしたのです・・・
彼の体調はどんどん悪くなり、とうとう眠り伏してしまいました・・・
それだけではありません・・・
軍団の全員が病に苦しみ、眠り伏してしまったのです。
これは何かの呪いでしょうか・・・
それとも敵の攻撃・・・?
神剣 布都御魂(ふつのみたま)
病に伏し、眠りから覚めないカムヤマトイワレビコとその軍団・・・
そこに、高倉下(タカクラジ)という者が訪ねてきました。
手にはひと振りの太刀を持っています。
タカクラジが、眠っているカムヤマトイワレビコにその太刀を献上すると・・・
太刀の力なのか、カムヤマトイワレビコが目を覚まして起き上がったのです。
カムヤマト「・・・長い間寝てしまった。」
カムヤマト「この剣は・・・?」
そして、カムヤマトイワレビコがその太刀を手にした瞬間!
キーーン!!
カムヤマト「なんだ・・・?」
この時、熊野の山の荒ぶる神が切り殺されていたのです。
そのため、眠り伏していた兵士たちも、みな目を覚ましました。
カムヤマト「この剣は・・・ これをどこで?」
タカクラジ「それが、こんな夢を見たのです・・・」
タカクラジが見た夢
天照大御神(アマテラス)と、天界の重鎮 高御産巣日神(タカミムスビ)が
武神 建御雷神(タケミカヅチ)を呼んでこう言いました。
アマテラス「地上界がとても騒がしく、私の子たちが苦しんでいるようです。」
アマテラス「タケミカヅチよ、葦原の中つ国はもともと貴方が平定した国。これから天降りなさい。」
タケミカヅチ「俺が地上界に降りなくても、この太刀がありますぜ!」
タケミカヅチはそう言って、ひと振りの太刀を差し出しました。
神剣 布都御魂(ふつのみたま)です。
タケミカヅチ「この太刀を地上に降ろせば大丈夫でしょう!」
アマテラス「でも、どうやって?」
タケミカヅチ「タカクラジの倉の屋根に穴をあけて、そこから落とし入れましょう。」
するとタケミカヅチは、夢としてこのシーンを傍観しているはずの、タカクラジの方を向いてこう言いました。
タケミカヅチ「だから、お前が朝目覚めたら、この太刀を天津御子に献上するのだ!」
タカクラジ「朝目覚めてから倉を見てみると、本当に太刀があったんです!」
カムヤマト「ほう・・・」
タカクラジ「それで、この太刀を献上したのです。」
こうしてカムヤマトイワレビコは、天界のアマテラスのおかげで、この難局を乗り切ったのでした。
古事記では、この神剣(神様)の名を3つ紹介しています。
- 佐士布都神(さじふつのかみ)
- 甕布都神(みかふつのかみ)
- 布都御魂(ふつのみたま)
この剣神は、奈良県天理市の石上(いそのかみ)神宮の主祭神です。
カムヤマトイワレビコの東征は、これからまだまだ続きます!
つづく