八咫烏(やたがらす)の導きによって
熊野から吉野まで軍を進めてきた
神倭伊波礼毘古命(カムヤマトイワレビコ)軍団。
行く先々で、国津神に出逢いますが
みな平和裏に恭順したのか
何事もなく順調に進んできました。
でも・・・
これから宇陀の地で、何かが起ろうとしています・・・
兄宇迦斯(エウカシ)と弟宇迦斯(オトウカシ)
宇陀(うだ:奈良県宇陀市)の地までやって来た、カムヤマトイワレビコ軍団。
そこには兄宇迦斯(エウカシ)と弟宇迦斯(オトウカシ)という兄弟がいました。
この兄弟もまた、カムヤマトイワレビコに服属してくれるでしょうか・・・
まずは八咫烏(やたがらす)を遣いに出します。
八咫烏「いま、天津神の御子がやって来た。お前たちは従属するか?」
エウカシ「なんだと~!!」
エウカシは弓に鏑矢(音の鳴る矢)をつがえると、八咫烏にむけて発射!
キュイ~~ン!!
八咫烏を追い返してしまいました。
この鏑矢が落ちた地を、訶夫羅前(カブラサキ)というようになりました。
エウカシの陰謀
そしてエウカシは、カムヤマトイワレビコ軍団を迎え撃とうと、兵を集めだしました。
しかし・・・
思うように兵が集まりません・・・
人望がなかったんでしょうか・・・
仕方がないので、「従属するふり作戦」に変更!
カムヤマトイワレビコのために御殿を造り、その中に罠を仕掛けて待ち受けていました。
危うし、カムヤマトイワレビコ!!
オトウカシの密告
その時、ひそかにカムヤマトイワレビコのもとを訪れた者がいました。
弟のオトウカシです。
オトウカシ「あなた様の身が危険です・・・!」
オトウカシは兄の作戦の全てを、カムヤマトイワレビコに話しました。
カムヤマト「よく打ち明けてくれた。しかしどうしたものか・・・」
部下「私どもにお任せください!」
名乗り出たのは 道臣命(ミチノオミノミコト)と、大久米命(オオクメノミコト)でした。
道臣命(ミチノオミノミコト)
大伴連(オオトモノムラジ)の祖先
大久米命(オオクメノミコト)
久米直(クメノアタイ)の祖先
どちらも軍事を司る氏族です。
二人はエウカシを呼びつけて罵ります。
「お前が作った御殿の中に、まずお前が入って恭順の意を示せ!」
そして刀の柄を握り、矛を向け、矢で狙って
エウカシを御殿の中へ追い込みました。
ぎゃあ~~!!
エウカシは、自分が作った罠にかかって死んでしまいました・・・
そして、エウカシの体はすぐに罠から引き出され
刀で切り散らかして捨てられたのでした・・・
それでこの土地を、宇陀の血原(ウダノチハラ)といいます。
その後、オトウカシは御馳走を献上し、それらは全てカムヤマトイワレビコの軍団に与えられました。
久米歌(くめうた)
この宴で唄われた歌があります。
久米歌(くめうた)です。
それは、こんな感じの歌でした。
宇陀の高台に鴫(しぎ)を獲ろうと
罠を張って待っていたら
鴫はかからず鯨がかかったよ
古女房が肴を欲しがれば
そば木の実のように中身のないものを
むしり取ってくれてやれ
新妻が肴を欲しがれば
ヒサカキの実のように大きなものを
そぎ取って与えなよ
え~ シヤコシヤ
あ~ シヤコシヤ
ちなみに、宇迦斯(オトウカシ)は、宇陀の水取(モイトリ)等の祖先です。
つづく
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