日本の神話の神様 玉祖命(たまのおやのみこと)。
いまいちマイナーな名前の神様ですが
あの三種の神器のうちのひとつ、八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)を作った神様として有名です。
この玉祖命(たまのおや)、いったいどんな神様なんでしょう?
その神話を中心に、お祀りしている神社やご利益などもご紹介します!
玉祖命(たまのおや)は八尺瓊勾玉を作った
玉祖命(たまのおや)が初めて古事記の神話に登場するのは、あの大事件 天の岩戸のお話です。
神話の内容はこんな感じ…(古事記より)
ここは天界、高天の原(たかまのはら)。
天照大御神は、弟のスサノオの天界での暴れっぷりに困っていました。
スサノオが問題を起こすたびに庇っていたのですが、それも限界を越え・・・
とうとう天の岩戸に引きこもってしまいます。
すると世界は闇に包まれ、災厄のオンパレード・・・
慌てた八百万の神様たちは会議を開き、どうすればアマテラス様を岩戸から連れ出せるか話し合いました。
良い案を思いついたのは、知恵の神思金神(オモイカネ)でした。
「岩戸の前でお祭りやって、どんちゃん騒ぎするべ。」
「そんでアマテラス様が気になって戸を開けたら、力づくで引っ張り出すだよ!」
さて、みんなは協力して祭りの準備を進めました。
まずは朝の合図にニワトリたちに鳴かせます。
コケコッコ~!
次に、天の安河の上流から硬い石(天の堅石:あめのかたしわ)と、天の金山(あめのかなやま)から鉄をとってきて、
伊斯許理度売命(イシコリドメノミコト)に八咫鏡(やたのかがみ)を造らせました。
そして、玉祖命(タマノオヤノミコト)は八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)をつくりました。
ちなみに、八咫の鏡(ヤタノカガミ)や八尺瓊勾玉(ヤサカニノマガタマ)は、
草薙剣(クサナギノツルギ)と合わせて、天皇の皇位の証 三種の神器になります。
さて、いよいよお祭り開始。
オープニングセレモニーは、天太玉命(アメノフトダマ)と天児屋命(アメノコヤネ)による占いショー!
天の香山(あめのかぐやま)からとってきた、雄鹿の肩の骨とカニワ桜の木を焼いて占いました。
占いが終わると、天太玉命が鏡や勾玉、木綿と麻の布などで飾り付けた巨大な榊を取り持ち、
天児屋命が美しい祝詞(のりと)を奏上します。
その時、天手力男(アメノタヂカラオ)が、岩戸の脇にスタンバイしました!
さて、祭りはクライマックスへ!
花を飾ったのは天細女命(アメノウズメ)の神楽舞い!
桶を逆さまにした台の上で、踊って踊っておどりまくります。
うぉ~~~!!
ウズメのダンスに盛り上がる会場!
興に乗ってストリップを始めてしまったアメノウズメ。
あはははは!
もう、神様たちは超大盛り上がり!
アマテラスは、岩戸の外のにぎやかな様子を不思議に思い、
ほんのちょっとだけ岩戸を開けてこう言いました。
アマテラス「私が引きこもってるから、天も地上も真っ暗なのに・・・」
アマテラス「なんでウズメは踊ってて、八百万の神たちは大笑いしてるの?」
ウズメ「あなた以上に貴い神様がいるの! それが嬉しくて踊ってるのよ♪」
その時、天児屋命と天太玉命が、八咫鏡(やたのかがみ)をこっそりアマテラスに向けて差し出しました。
光り輝く鏡をみたアマテラス。
自分が映っているだけなのですが、それに気づきません。
アマテラス「えっ・・・ 私以外にも太陽神がいる・・・」
そしてアマテラスが外を覗こうとして、さらに岩戸を開けたその時です!
「いまじゃ~!!」
脇に隠れていた天手力男(アメノタヂカラオ)が、アマテラスの腕を掴んで外へ引っ張り出しました。
天太玉命が、すかさずアマテラスの後ろにしめ縄の結界を張ります。
天太玉命「これより中には戻れません!」
アマテラス「・・・!」
こうして無事アマテラスを天の岩戸から引っ張り出し、
世界にまた光が戻ったのでした。
お祭り作戦大成功!
はい、天の岩戸の神話はこんな感じです。
玉祖命(たまのおや)も出てきましたねえ~。
チラッとだけ・・・
台詞もありませんでしたが・・・
それでも、玉祖命(たまのおや)が重要な神様だっていうことは分ります。
だって、あの三種の神器のひとつ、八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)を作った神様なんですから!
詳しい神話はこちら!
八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)とは?
八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)とは、ひとことで言うと「とっても大きな勾玉」。
尺は昔の長さの単位で、8尺はだいたい144cmくらい。
勾玉のどの部分が144cmあったのかはともかく、かなり大きなものですね!
ただし、実際のところは、こんな正確に大きさを表現したかった訳ではないようです。
昔は、「とっても大きい」「とっても長い」「とってもたくさん」を、「八」という数字を使って表現しました。
たとえばこんな風・・・
八咫烏(やたがらす)➡ 八咫(はちあた:144cmくらい)のカラスではなく… ➡ とっても大きなカラス
八十神(やそがみ)➡ 80柱の神ではなく… ➡ たくさんの神様
八咫鏡(やたのかがみ)➡ 八咫の鏡ではなく… ➡ とっても大きな鏡
だから、八尺瓊勾玉も「とっても大きな勾玉」と表現しているわけですね!
玉祖命(たまのおや)とはどんな神様?
さて、玉祖命(たまのおや)とはどんな神様なのか?
ここでちょっと詳しくご紹介します。
神話を読んで解るように、玉祖命(たまのおや)はあの三種の神器のひとつ、八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)を作った神様です。
神格
- 玉造りの神様
ご利益(神徳)
- 宝石業守護
- 眼鏡業守護
- カメラ・レンズ業守護
古代の氏族 玉造部(たまつくりべ)の祖神とされています。
この神様、別称も多いです。
玉祖命(たまのおや)の別称
- 玉屋命(たまのやのみこと)
- 天明玉命(あめのあかるたまのみこと)
- 天羽明玉命(あめのはあかるたまのみこと)
- 羽明玉(はあかるたま)
- 天豊玉命(あめのとよたまのみこと)
- 天櫛明玉命(あめのくしあかるたまのみこと)
神話では、先ほど紹介した天の岩戸に登場するほか、名前がもう一度出てきます。
それは、次章で紹介する「ニニギの天孫降臨」の神話です。
玉祖命(たまのおや)は天降りした神様
時は流れて、神話は天孫降臨の章。
地上界の盟主 大国主大神から、葦原の中つ国を譲り受けたアマテラス。
地上界を統治させるため、孫の邇邇芸命(ニニギ)に天降りさせます。
その時、ニニギのお供をした5柱の神様 五伴緒(いつとものを)の一柱が、玉祖命(たまのおや)なんです。
実は、五伴緒は天の岩戸で活躍した神様ばかり。
ちなみに、ニニギに随伴して天下りした神様は他にもいます。
同じく、天の岩戸で活躍した思金神(おもいかね)や、天手力男(アメノタヂカラオ)も、ニニギと一緒に天降りしてるんですよ。
天孫降臨の神話はこちら
玉祖命(たまのおや)をお祀りする神社
- 玉祖神社(山口県防府市)
- 玉造湯神社(島根県松江市)
- 玉祖神社(大阪府八尾市)
- 石作玉作神社(滋賀県長浜市)
- 玉諸神社(山梨県甲州市)