前回、高天原を出発し、地上界への天降りを始めた邇邇芸命(ニニギ)。
雲を押し開き、道なき道をかき分けて進み、日向(ひむか)の高千穂にある、くじふる岳に天降りました。
そして、この地に天まで届きそうな立派な宮殿を打ち建てたのでした。
今回のお話は、そんなニニギ御一行の中の、天宇受売神(アメノウズメ)と猿田毘古大神(サルタビコ)のお話です。
猿田彦と共に旅立つアメノウズメ
ニニギの天降りの道先案内役だった 猿田毘古大神(サルタビコ)が、故郷の伊勢に帰ることになりました。
ニニギ「そうだ、アメノウズメ。」
ウズメ「は~い」
ニニギ「サルタビコをさ、あの時『あんた誰?』って訊いたお前が送ってあげなよ。」
ウズメ「わかりました!」
ニニギ「そうだ、名前もサルタビコの名をもらって、彼に仕えるといいよ!」
ウズメ「わかったわ、今日から私は猿女(サルメ)ね!」
そういうわけで、天宇受売神(アメノウズメ)の子孫の女性は、猿田毘古大神の名を取って 猿女君(さるめのきみ)と呼ばれるようになりました。
猿女君(さるめのきみ)
大昔から朝廷の祭祀に携わってきた氏族のひとつ。
こうしてアメノウズメとサルタビコは、伊勢へと旅立ったのでした。
サルタビコ、海でおぼれる!
アメノウズメとサルタビコ、これからふたり仲良く暮らしたのかと思いきや・・・
実は、とんでもない事件が起きたんです。
それは、サルタビコが伊勢の阿耶訶(あざか)にいた時のことでした。
阿耶訶(あざか)
三重県松阪市大阿坂町あたり
海へ漁に出かけたサルタビコ、なんと比良夫貝(ヒラブガイ)に手を挟まれてしまったんです!
ぐぼぼぼっ・・・!
げぽっ・・・
サルダビコは海へ沈み、溺れてしまいました・・・
なんてあっけない最期・・・
ちなみに、サルタビコが
海の底に沈んだときの名を 底どく御魂。
海の水が泡になってブツブツ上がったときの名を つぶたつ御魂。
その泡が割れた時の名を あわさく御魂といいます。
なんのことやら解りませんね・・・
古事記には、海でおぼれたサルタビコが、どうなったのかは書かれていません。
死んだのか、生きてるのか、どっちなんでしょうね・・・
どちらにしても、これ以後サルタビコは登場しません。
アメノウズメ、ナマコの口を切る!
そして、サルタビコを送って帰る途中のアメノウズメ。
海辺で大きな魚から小さな魚まで、いろいろ集めてこう言いました。
ウズメ「おまえたちも、当然ニニギ様に仕えるわよね?」
魚たち「当然です!」
ナマコ「・・・・・・」
ほとんどの魚たちが仕えると答えたのに、ナマコだけが返事をしません。
ウズメ「ナマコ、なんで黙ってるの?」
ナマコ「・・・・・・」
やっぱりナマコは答えません。
これにぶち切れてしまったアメノウズメ・・・
ウズメ「ムキー!この口が答えぬ口かあ~!!」
そう言うと、ナマコの口を小刀で切り裂いてしまいました・・・
それで、いまもナマコの口は裂けているそうな。
この逸話がもとで、志摩の国から初物の魚介類が献上されると、
天皇はアメウズメの子孫の、猿女君に分け与えるのです。
アメノウズメ(天宇受売神)とサルタビコ(猿田毘古大神)の物語は、これでおしまい。
次からは、ニニギと木花佐久夜比売(コノハナノサクヤビメ)のお話が始まります!
つづく
次の話:【神社の神様の神話】木花佐久夜毘売① ニニギのひとめ惚れ