前回、たった1回の交わりで妊娠した木花咲耶姫(コノハナサクヤヒメ)。
そして、それを信じられず
「ほかの男の子だろ!?」
と、男として最低なことを言ってしまったニニギ。
いろいろありましたが、無事三柱の子たちが生まれてきました。
今回からは、その子供たちのお話です。
前の話:木花咲耶姫② 「 本当に俺の子なの?」と疑う邇邇芸命(ニニギ)
山幸彦と海幸彦
炎の中、木花咲耶姫(コノハナサクヤヒメ)から無事に生まれてきた、邇邇芸命(ニニギ)の3人の息子たち。
いまでは彼らもすっかり成長して、よい若者になりました。
長男の火照命(ホデリ)は海幸彦(ウミサチヒコ)として、海の獲物を獲り、
三男の火遠理命(ホオリ)は山幸彦(ヤマサチヒコ)として、山の獣を狩っていました。
つまり、漁師と猟師ってことですね。
ちなみに、次男の火須勢理命(ホスセリ)がどうしてるのかは分かりません。
だって、古事記にはなんにも書かれてないから・・・
道具を交換したい山幸彦(ホオリ)
山の猟師を生業(なりわい)にしている三男のホオリでしたが、
実は前々から海での漁にとっても興味がありました。
というか、自分も魚を獲ってみたかった・・・
そこでホオリは、兄のホデリにこう言いました。
ホオリ「お互いの道具を交換してみない?」
ホデリ「ダメだ!」
ホデリ、取りつく島もありません・・・
ホオリは、もう3度も提案してみてるんですが、ぜんぜんダメでした・・・
それでもホオリはめげません。
ホオリ「おねがいだよ~ 兄ちゃん!」
ホデリ「・・・仕方ないな、ちょっとだけだぞ。」
ホオリ「やった~!!」
少しの間だけですが、やっと道具を取り換えてもらえました!
喜んだホオリ、さっそく海へ出かけました。
釣針を失くしたホオリ(火遠理命)
意気揚々と釣りに出かけたホオリでしたが・・・
ホオリ「・・・」
ホオリ「・・・・・」
ホオリ「・・・・・・・」
魚は一匹も釣れません・・・
なんだか全然楽しくありません・・・
ホオリ「あ~もう!!」
そして力任せに竿を引き上げた時、
ブチっ!!
ホオリ「えっ・・・?」
恐る恐る竿を引き上げてみると、なんと糸の先の釣針がなくなっていたのでした・・・
ホオリ「ヤバい・・・」
ちょうどそこにやって来た兄のホデリ。
なんか変な言葉をつぶやいています。
ホデリ「山さちも 己(おの)がさちさち、海さちも 己がさちさち。」
どうやら、こう言いたかったようです。
山の幸も海の幸も、自分の道具でなきゃ獲物なんて取れないよ。
ホデリ「というわけだから、俺の道具を返して。」
ホオリ「それが・・・」
ホデリ「うん・・・?」
ホオリ「1匹も釣れずに、釣針を失くしちゃったよ・・・」
それを聞いたホデリ兄さん、
ホデリ「なんだと~!? 」
ホデリ「返せよ!今すぐ返せ!! 返せ返せ~!!!」
もう、すごい勢いで返還請求・・・
そこでホオリは、腰に差していた十束剣(とつかのつるぎ)を砕き、
釣針を500個も作って償おうとしたけど、受け取ってもらえませんでした。
ホオリは、さらに1000個の釣針を作って渡そうとしたけど
ホデリ「あの釣針を返せ!!」
と、兄の反応はとっても頑固でした・・・
塩椎神(シオツチガミ)の助け
ホオリが海辺で途方に暮れていると、海の向こうから誰かがやって来ます・・・
塩椎神(シオツチガミ)のお爺さんです!
塩椎神(シオツチガミ)
潮流を司る神様。製塩の神様としても信仰されています。
シオツチ「なんで泣いとるのじゃ?」
ホオリは今までのことを、シオツチに話しました。
シオツチ「それは難儀じゃのお。どれ、ワシに名案がある・・・」
シオツチはそう言うと、竹で隙間なく編んだ船を造り、ホオリを乗せました。
そして、ホオリに名案を話して聞かせます。
塩椎神(シオツチガミ)の名案
ワシがこの船を押し流すから、そのまま進むのじゃ。
その先に良い海流があるから、それに乗って進みなされ。
すると、魚のウロコのように作られた宮殿がある。海神 綿津見神(ワダツミ)の宮殿じゃ。
宮殿の門のそばの井戸の上には、神聖な桂の木がある。
その木の上に座っておれば、海神の娘がなにかと取り計らってくれるじゃろう。
ホオリ「わかったよ! ありがとう!」
こうしてホオリは、海原へと冒険の旅に出たのでした。
つづく
次の話:山幸彦と海幸彦② 火遠理命(ホオリ)と豊玉毘売(トヨタマビメ)