自分の悩みを、3年もの間忘れていたホオリ(火遠理命)。
ようやく思い出して、また途方にくれます・・・
釣針は綿津見神(ワダツミ)が見つけてくれ、
なぜか兄を打ち負かす方法も教えてくれました。
そして、ホオリはいよいよ地上界へ戻ります!
前の話:山幸彦と海幸彦③ ホオリ(火遠理命)、釣針を見つける
一尋和邇(ヒトヒロワニ)の背に乗って
ワダツミ「いま、ホオリ様が地上界へお帰りになる!」
ワダツミ「何日でお送りして帰ってこれるか!?」
ワダツミが、集まった魚たちに問いかけました。
魚たち「私は4日で帰ってこれます。」
魚たち「僕なら3日で帰ってこれます!」
魚たちは口々に答えました。
やはり体の大きさで、かかる日数が決まってくるようです。
???「俺なら、一日で送って帰ってこれますぜ!」
そう言ったのは 一尋和邇(ヒトヒロワニ)、とっても大きな体のサメです。
日本の神話には和邇(ワニ)が時々登場します。その正体は特定されていませんが、たぶんサメだろうと考えられています。
ワダツミ「ならばお前がホオリ様をお送りしなさい。」
ヒトヒロワニ「はいっ!」
ワダツミ「海中を通るとき、恐ろしい思いをさせるなよ。」
ヒトヒロワニ「了解!」
ワダツミは、ホオリをヒトヒロワニの首の上に乗せました。
ワダツミ「それではホオリ様、これでお別れですな。」
ホオリ「・・・今までありがとう。」
ワダツミ「すべて首尾よく行きますように!」
ワダツミはそう言うと、ホオリを送り出しました。
ヒトヒロワニ「すっ飛ばしやすぜ、しっかりつかまってくだせえ!」
ヒトヒロワニは、ものすごいスピードで泳ぎ始めました。
そして言っていた通り、たったの一日で浜に到着したのでした。
ホオリ「ありがとう、ヒトヒロワニ。」
ヒトヒロワニ「お安い御用です。」
ホオリ「そうだ、お前にこれをやるよ。」
ホオリは腰につけていた小刀を取り出すと、ヒトヒロワニに与えました。
この時、ヒトヒロワニは 佐比持神(サイモチノカミ)となったのでした。
佐比持神(サイモチノカミ)
佐比(サイ)とは刀のこと。つまり刀を持った神様。
火遠理命(ホオリ)、兄を懲らしめる
3年ぶりに戻ってきたホオリ、さっそく兄に会いに行きました。
ホオリ「やあ、久しぶり兄貴。」
ホデリ「ホオリ! 今までどこに行ってた!? 俺の釣針はどうした!?」
ホオリ「それを返しに来たよ。」
ホオリは釣針を取り出すと、ワダツミに言われたように呪文を唱えました。
この鉤(ち)は、淤煩鉤(おぼち)、須々鉤(すすち)、貧鉤(まぢち)、宇流鉤(うるち)
そして、釣針を後ろ手に返しました。
これで呪いは発動しました。でも、特になにも変わったことは起こりません。
しかし、それからのホデリは散々でした。
田んぼを作るたびに、災害にやられてしまうのです。
高いところに田を作れば干ばつ被害にあい、
低いところに田を作れば水害にあい・・・
ホデリはどんどん困窮していきました・・・
心もひどく荒んでいきます・・・
ホデリはホオリのことを妬むようになります。
ホオリはいつも自分と逆の土地に田を作り、毎年豊作だったからです。
そして、ある日のことです。
ホデリはついに、弟のところに攻め込んできました!
ホオリはワダツミにもらった塩満珠(シオミツタマ)と、塩乾珠塩乾珠(シオフルタマ)を使って応戦します。
攻めてきたら 塩満珠で水攻めにして溺れさせ、
助けを求めてきたら 塩乾珠で救い出す。
こうやってホデリを悩ませ、苦しめました。
ホオリの攻撃についに観念したホデリは、弟に降参してしまったのでした。
ホデリは頭を下げてこう言います。
ホデリ「これからは、あなた様の昼夜の守護人(まもりびと)となって仕えます。」
こうして、ホデリの子孫の 隼人(はやと)は、
今でもその溺れた様子を絶えることのないように伝え、天皇に仕えています。
めでたし、めでたし!
それにしても・・・
妻の豊玉毘売(トヨタマビメ)のことはどうなったんでしょう・・・
海の宮殿に置いてきたままです・・・
次回は、そんな豊玉毘売のお話です!
つづく