前回、高天原を追放された後、大気津比売神(オオゲツヒメ)に食べ物を求めた須佐之男命(スサノオ)。
快く食事を提供してくれたオオゲツヒメでしたが、食材を口やお尻から出しているのを見てしまい・・・
スサノオは怒りのあまり、オオゲツヒメを殺してしまいました。
さて、今回はスサノオが地上に降りたってからのお話です!
スサノオ、櫛名田比売(クシナダヒメ)に出逢う
高天原を追放されたスサノオは、地上界に降りました。
降り立った場所は、出雲国の肥河(ヒノカワ)の上流にある、鳥髪(トリカミ)の地。
肥河(ヒノカワ)とは、現在の島根県の斐伊川のこと。
ふと川を見ると、上流から箸が流れてきます。
スサノオ「おっ、上流に誰か住んでるな。」
スサノオはその誰かを探して、上流へ向かいます。
しばらく歩くと前方に人影が見えました!
やっぱり誰か住んでいたのか!
でも様子がおかしい・・・
老夫婦が、若い娘を挟んで泣いていたんです。
スサノオ「だれ? お前たち。」
老夫「わしは国津神の大山津見神(オオヤマツミノカミ)の子で、足名椎(アシナヅチ)ですじゃ。」
老父「妻の名前は手名椎(テナヅチ)、娘の名前は櫛名田比売(クシナダヒメ)ですじゃ。」
どうやら、山の神の子孫のようです。
スサノオ「ふ~ん。で、なんで泣いてんの?」
アシナヅチ「ワシには8人の娘がおったんじゃが・・・」
アシナヅチ「あの高志(こし)の八岐大蛇(ヤマタノオロチ)に、毎年ひとりずつ食べられていましてのう・・・」
アシナヅチ「もうすぐ、またヤマタノオロチが来る頃なのです。それで泣いていましたんじゃあ・・・」
高志(こし)とは越国(こしのくに)のこと。今の福井県敦賀市から山形県庄内地方の一部までの地域。
スサノオ「そいつって、どんな形してる?」
アシナヅチ「それはもう恐ろしい姿で・・・」
アシナヅチの話によると、八岐大蛇の目はホオズキのように赤く、ひとつの体に頭と尾が八つもある怪物なんだとか。
アシナヅチ「そう、体には蘿(つた)や杉や檜がびっしり生えておりましたなあ・・・」
アシナヅチ「八つの谷と八つの峰に届くほどの長さで、腹を見るといつも血がにじんどりました。」
そこで、スサノオが突飛なことを言っちゃいます。
スサノオ「じゃあさ、あんたの娘を俺に差し出せば?」
アシナヅチ(え・・・、何言ってんのこいつ・・・)
アシナヅチ「でもねえ、あなたの名前も知りませんのでなあ・・・」
スサノオ「俺はアマテラスの弟さ! いま天上界から降りてきたところだ。」
アシナヅチ「・・・!!」
アシナヅチ、この言葉を聞いてガラッと態度が変わりました。
アシナヅチ「ぜひ娘を差し上げましょう!!」
スサノオの作戦
さあ、八岐大蛇(ヤマタノオロチ)との戦いに向けた準備が始まります!
スサノオはクシナダヒメの姿を爪型の櫛に変え、自分のミズラに刺しました。
そして、スサノオは両親へこう指示します。
八塩折(ヤシオリ)の酒を造れ!
(八塩折の酒とは、なんども繰り返し醸造した強い酒のこと)
垣根の囲いを作って、八つの入口を作れ!
入口ごとに台を作って酒桶を置き、 濃い八塩折の酒で満たせ!
スサノオ「準備が終わったら待ってろ。」
現れた八岐大蛇(ヤマタノオロチ)!
アシナヅチとテナヅチは、スサノオに言われた通りの準備を終えて待っていました。
すると・・・
とうとう八岐大蛇が現れました!
アシナヅチの言っていた通りの恐ろしい姿です・・・
クシナダヒメを食べようと探していた八岐大蛇。
ふと見ると、美味しそうな酒が置いてあります。
八岐大蛇「これは美味そうな酒じゃあ!」
八岐大蛇は、八つの頭を酒桶に突っ込みました。
グビグビグビ~!
一気に飲み干します。
そして、その場で寝てしまいました。
強い酒を飲んで酔っぱらってしまったのでしょう。
それを隠れて見ていたスサノオ、おもむろに十拳剣(とつかのつるぎ)を抜くと、
ザシュッ!
ザシュッ!!
ザシュッ!!!
八岐大蛇を切り刻んでいきます!
切るたびに大量の血があふれ出し、川を赤く染めて流れていきました。
スサノオはつづけて切り刻んでいきました。
そして尾を切っていたときでした。
ガキッ!
なにか硬いものに当たったようです。
剣の刃が欠けてしまいました・・・
スサノオ「なんだ・・・?」
確かめてみると、なにか輝くものが・・・
それはなんと、美しく輝く神剣 草薙剣(くさなぎのつるぎ)でした!
草薙剣(くさなぎのつるぎ)
天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)とも呼ばれる神剣です。
後世、あの 日本武尊(やまとたけるのみこと)が草原で火攻めにあったとき、
この剣で草を薙(な)いで防いだ、という逸話があります。
それで草薙剣と呼ばれるようになりました。
そしてこの剣こそが三種の神器のひとつです。
スサノオの神剣
スサノオが八岐大蛇の退治に使った剣も、神剣のひとつです。
剣の名は神話を記した書物によって違います。
たとえばこんな名前・・・
天羽々斬(あめのはばきり)
布都斯魂剣(ふつしのみたまのつるぎ)
蛇之麁正(おろちのあらまさ)
古事記では、ただの一般名称である 十拳剣(とつかのつるぎ)としか書かれていません。
「拳10個分の長さの剣」、という意味です。
こうして八岐大蛇を倒し、神剣まで手に入れたスサノオ。
世界一の乱暴者は、ここに英雄となったのです!
次に続く