最愛の妻である伊邪那美神(イザナミ)が死に、悲しみと怒りのあまり、
子の火之迦具土神(ヒノカグツチ)を切り殺してしまった伊邪那岐神(イザナギ)。
それでも、彼の悲しみは落ち着くどころか、どんどん増していきました。
そして思いつめたイザナギは、ある決心をするのですが・・・
イザナギ、黄泉の国へ行く
死んでしまったイザナミにどうしても逢いたい・・・
そう思いつめたイザナギは、とうとうこう決断します。
イザナギ「黄泉国(よみのくに)まで逢いに行こう!」
さっそくイザナギは、死者の国である黄泉国(よみのくに)へ出かけました。
黄泉平坂(よもつひらさか)を通って黄泉の国に着くと、その入り口は戸で固く塞がれています。
イザナギ「イザナミ~~!」
すると・・・
ギィ~~~・・・
戸が開き、イザナミが出てきました。
イザナギ「イザナミ!!」
イザナミ「こんな所まで来てしまったの・・・」
イザナギ「愛しい僕の奥さん!ふたりで作った国はまだできてないよ。一緒に帰ろう!」
イザナミ「くやしいな・・・もっと早く来てくれてれば良かったのに・・・」
イザナミ「私はもう黄泉の国の食べ物を食べてしまったの・・・」
死者は一度でも黄泉の国のものを食べると、もう地上界へ戻ることはできません。
イザナミはもう、完全に黄泉の国の住人になっていたのです。
イザナミ「でも・・・ せっかく来てくれたんだから、なんとかして帰りたい。黄泉の神様に相談してみるね。」
イザナギ「お~!そうしておくれよ。」
イザナミ「ただ、お願いがあるの。」
イザナギ「・・・なに?」
イザナミ「相談している間、絶対に私を見ないでね。」
そう言って、イザナミは戸の内へ戻っていきました。
イザナギ、約束を破る・・・
あれからだいぶん時間が経ちました。
でも、イザナミが戻ってくる様子はありません・・・
しびれを切らしてしまったイザナギ、よせばいいのに行動を起こします。
左のミズラに挿していた櫛の太い歯を一本折り、その先に火をつけます。
その灯りを頼りに、戸の中へ入ってイザナミを見ると・・・
イザナギ「うぎゃ~~!!」
なんとイザナミの体は腐ってウジだらけ・・・
おまけに、体に8柱もの雷神をまとっています!
イザナミの体にいた雷神
- 頭には 大雷(オオイカヅチ)
- 胸には 火雷(ホノイカヅチ)
- 腹には 黒雷(クロイカヅチ)
- 陰部には 拆雷(サクイカヅチ)
- 左手には 若雷(ワカイカヅチ)
- 右手には 土雷(ツチイカヅチ)
- 左足には 鳴雷(ナルイカヅチ)
- 右足には 伏雷(フシイカヅチ)
それはもう、イザナミというより化け物のようでした・・・
逃げるイザナギ、追うイザナミ
イザナミの恐ろしい姿に度肝を抜かれたイザナギ。
愛情なんてどこかへすっ飛んでしまい、慌てて逃げ出しました。
イザナミ「わたしに恥をかかせたなあ~!」
イザナミ「ヨモツシコメよ、イザナギを追え!」
ヨモツシコメ(予母都志許売)とは、黄泉の国に住む醜く恐ろしい女です。
後を追うヨモツシコメ!
必死に逃げるイザナギ!
ふたりの距離はどんどん近づき、もう追いつかれそうです!
そこでイザナギは、髪に巻き付けていた黒いカズラの蔓(つる)を投げ捨てました。
すると蔓は勢いよく成長し、ぶどうの実がなったのです。
シコメ「!! ぶどうじゃあ~!」
シコメはぶどうに食いつきます。
その間に逃げきろうとするイザナギ。
でも、シコメはあっという間にぶどうを平らげ、また追いついてきました!
イザナギは、右のカズラに挿してあった櫛を投げ捨てました。
するとタケノコがたくさんニョキニョキ!
シコメの意識はタケノコにそれて、抜いては食いついています。
こうしてイザナギは、なんとかシコメから逃げ延びたのでした。
だがしかし!!
イザナミの追撃はまだ終わっていませんでした。
さらに強力な刺客が放たれたのです!
イザナギ万事休す!?
つづく