前回、変わり果てた伊邪那美神(イザナミ)の姿に、愛もどこかへ吹っ飛んでしまった伊邪那岐神(イザナギ)。
恐怖のあまりその場から逃げ出すのですが、イザナミの追撃は執拗で・・・
追手の予母都志許売(ヨモツシコメ)を振り切ったものの、また新たなる刺客が現れます!!
果たして、イザナギは逃げ切れるのか!?
新たなる追撃者! 雷神軍団
なんとかヨモツシコメから逃げ切ったイザナギ。
イザナギ「ふう…って、うわ~!!」
すかさず新たな追撃者が現れたのです!!
なんとイザナミは、体にまとっていた雷神率いる、その数1500の黄泉軍団を送り込んだのでした!
イザナギは十束剣(とつかのつるぎ)を抜くと、後ろ手に振り回しながら逃げます。
後ろ手に剣を振るうのは、呪いの行為のひとつです。
逃げて逃げて逃げて・・・
ようやく黄泉平坂(よもつひらさか)までたどり着いたイザナギ。
でも、黄泉軍団はもうそこまで追(せま)っています!
イザナギ「あ~もう!しつこいな!!」
辺りを見回すと、坂の下に桃の木があります。
イザナギはその木から桃を3個もぎ取ると、黄泉の軍団に向けて投げつけました!
ぐぎゃ~~!!
なんということでしょう!
桃の実に退魔の力があったのか、黄泉軍団は逃げかえっていきました。
イザナギは桃の実にとっても感謝しました。
イザナギ「お前が僕を助けたように、葦原の中つ国(あしはらのなかつくに)の人間が苦しみ困っていたら、助けてあげなさい。」
そう言って、桃に 意富加牟豆実命(オオカムヅミノミコト)という名を授けました。
葦原の中つ国とは地上界のこと。その中でも日本を意味しています。
イザナミとイザナギの別離
ふたつの追手を退けたイザナギでしたが、最後の試練が訪れます。
なんと、イザナミが現れたのです!!
イザナミは、まるでゾンビのような恐ろしい姿で迫ってきます。
イザナミ「行かせないぞ、イザナギ~!」
イザナギ「うわ~!くるな~!!」
慌てたイザナギ、また辺りを見まわすと、大きな岩がありました。
千人がかりでようやく動かせるという 千引の石(ちびきのいわ)です。
そんな大きな岩でしたが、ここは火事場の馬鹿力!
イザナギは岩を抱えると・・・
イザナギ「うお~~!!!」
どし~ん!!!
黄泉平坂の道を塞いでしまいました!
岩の向こうから、イザナミの声が聞こえます。
イザナミ「愛しいイザナミ。なんでこんなことするの・・・」
イザナミ「それなら、あなたの国の民を毎日1000人締め殺してやる!」
イザナギ「愛しいイザナミがそんなことするなら、僕は毎日1500の産屋(うぶや)を建てよう!」
そして、イザナギはなんとか黄泉の国を脱出したのでした。
こうして、イザナギとイザナミは永遠の別離を迎えたのです。
日本で初めての離婚ですね・・・
また、人間は毎日1000人死んで、新たに1500人生まれるようになりました。
私たちは、イザナギの神力によってこの世に生まれ、イザナミの神力によって死ぬことになったのです。
その後、イザナミは 黄泉津大神(ヨモツオオカミ)と呼ばれるようになったそうです。
また、イザナギに追いついたことから、道敷大神(チシキノオオカミ)とも呼ばれます。
黄泉平坂を塞いだ千引きの岩は 道反之大神(ちがえしのおおおかみ)と名付けられました。
または 黄泉戸大神(ヨミドノオオカミ)ともいいます。
最後に、黄泉比良坂とは、今の出雲国の伊賦夜坂(いふやさか)のことです。
つづく